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第6話

彼らが居るのは裏庭の入り口。 裏庭の真ん中に自分は居る訳だが、勝手口との距離を考えてみれば――上手く行けば――見つからずに移動できる。 息を殺し何とか立つ。 膝が震えて、すぐにへたり込む。 這う様にしてでも、前に進む。 四つん這いで進みながら、腰を少しずつ上げ地面から手を放す。 二足歩行を覚えた動物のように、中腰で進む。 彼らの視界に入らぬ事を祈り、逃げて、そしてまた誰にも気付かれないまま部屋に戻るのだ。 大丈夫。 誰も自分には気付かない。 こんな風に無様に転倒し怪我をしても、 階段で一人泣いていても。 助けて欲しいと願っても。 誰も気が付かない。 はぁはぁと息が荒くなり、支離滅裂な思考が渦巻く。 息苦しい。 早く早く。 「あそこにも鳥が隠れておりますな」 「今度は分かったわ。色からして鶯かしら」 父の朗らかな声に母は上機嫌に微笑んでいる。 「小さくて特徴まで確認はできませんが、鳴き声からしてメジロでしょう」 大きくないが良く通る声がした。 幼いが、淡々とした声音。 肩越しに振り向く。 「あ……」 己の家族に囲まれていた少年がこちらを見つめていた。 遠目からでも良く分かる。白い綺麗な顔だった。

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