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第7話
表情の無い、それでも整い過ぎた顔にあっと驚いて動きを止める。
視線が少年から外せなくなり、暫しの間見惚れた。
園路に彼らが足を踏み込んだ時に逃げれば良かった。
何故、こんな裏庭にとか考える前に誰かがこちらに気付く前に立ち去れば良かった。
だが、彼と目が合った。
見つかってしまった。
裏庭の入り口で皆は桜の陰に居る鳥を指さしている。
彼以外、誰もこちらを見ていない。
桜と鳥に夢中だ。
彼は無言だ。
他の誰も気付かない。
彼一人なら、見逃してくれるのではないか。
皆が気付かない内に逃げなくては。
それなのに。逃げなくてはならないのに。
自分は、彼らの前に居てはいけないのに。
微動だにしない彼の視線と、絡めとられ動けない自分。
魔法の様に彼と自分の二人だけが、同じ空間に居て時間がとまった気がした。
最後のチャンスを棒に振ったのだ。
後悔しても後の祭り。
――そして、直ぐに少年に付き添われた男の声に均整が崩れる。
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