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第16話
「寛大なご配慮をして頂き心より感謝いたします。――ご覧の様に錦様は、意志が強く少々頑固な一面もございます。故に、誤解を招くこともございますが大変誠実で、お優しい方なのです」
「幼いながらも驚くほど思慮深いと噂はかねがね聞き及んでおりましたが、実際にお会いしご年齢を忘れてしまう程の聡明さに驚きを隠せませんでした」
父があたふたと頷く傍ら兄が少年に微笑む。
背を向けた少年は此方からどんな表情をしているのか分からない。
「本人を前に言う事ではありませんが、聡明さ故に時折彼の年齢を忘れてしまう方も多いのです。しかし、まだ八歳の少年なのです。我々の半分も生きておりません。当然未熟な所も多々ございます」
一旦言葉を切り、兄達に軽く頭を下げる。
「どうぞ、秋庭様のご家庭に対する錦様の発言につきましては、ご寛容くださると、誠に幸いに存じます」
相手を立てる様に申し訳なさそうな笑みを浮かべながらも、少年を庇護する。父は慌てて「そ、そんな頭を上げてください。我々が悪いのです」と老紳士に飛びつかんばかりの勢いでまくしたてる。
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