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第17話
「……頑固ではありません」
「はっはっは。またご冗談を。錦様が頑固でなければ、この国からは頑固な人間はいなくなりますな。ねぇ、秋庭様」
「い、いえ、そんな。私共が悪いのです」
「その通りです。そもそも子供を人前で悪し様に罵る貴方方が悪い。よって此方が謝罪をする必要性も感じない」
「大人になれば分かりますよ」
「つまりは口先だけと言う事か。両家の今後を考えれば未来は無いな」
「に、錦様っそんなっ」
「口先だけでは信頼関係は築けません。そう言いたいのです」
年寄りが一人困った困ったと頭を撫でる。
少年は此方をちらりと見る。
ただ、阿呆のように少年を見返した。
未だ立ち去ることなく地面に座り込んだままの自分を彼はどう感じたのだろう。
「――今日のことは父に報告をしておきます」
「お、お待ちください。お父様に、社長に報告とは、え、縁談は」
「縁談は当家から望んだもの。変わりはありません」
――縁談? 何の話だ。
そこでざっと血が引いた。
まさか、彼が今日訪れたのは縁談の為だったのか?
自分は常に蚊帳の外だったから、知らなかった。
だって、あんな小さな子供が縁談だなんて。
ましてや、こんな格差の有る見合いなど誰が考えられる。
朝比奈本家の子息なら、同等の家柄の相手を選ぶものではないのか。
「錦様?」
驚いた付き添いの声。
少年はゆっくりとした足取りでこちらに向かい歩いてくる。唖然とする他の誰にも目を向けない。
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