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第2話

「あの、有難う」 眼が合い慌てて俯く。 ふっと風に乗り微かにだが甘い香りがした。 これは、家でも嗅いだ事の無い知らない香りだ。 母や姉の使う人工的な香料とは違う。 仄かに甘く柔らかい。 ミルクやビスケットの甘さにベビーパウダーを思わせる優しさが混ざり合う。 清潔で温かな香りは、無垢な子供の香りそのものだった。 言葉にできない何かが胸にせり上がる。 顔立ちも年相応の幼さなのに、少年の眼差しや雰囲気は自分よりも大人びている。 大人が相手でも真っ直ぐに見上げて話す姿は、毅然としていた。 だから、厳格で怖いのだと思っていた。 しかし、あの老紳士が言う様にとても優しい少年なのだろう。

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