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第6話

どのように生きれば、こんな風になれるのか。 如何すれば彼のように振る舞えるのか。 生まれ持った資質か、後天的に身に付いたものか。 嫉妬すら起きない完全さ。 少年は彼から視線を外し、こちらを真っ直ぐに見つめて来た。 眼差しが包み込むような柔らかさを帯びる。 「私の付き人が甚だ無礼な振る舞いに及んだこと深くお詫び申し上げます」 少年は小さく頭を下げる。 素直な髪が重力に従い流れる。 その流れに従い、光沢が揺れた。 彼を構造する一つ一つが綺麗でぼうっと見つめた。 男が息をのみ、遠くからは小さな悲鳴に近い声が聞こえる。 「に、錦様おやめ下さい」 裏返った声で錦に縋るが、彼は視線を外さない。 付き人が謝罪を渋った故の行動だ。 こんな小さな子供が、その責を負い頭を下げるなど信じられない思いもあった。 「私は過去に心臓の移植手術を受けました。経過は順調ですが主治医より行動制限が課せられています。――……彼の言動は私の身を案ずるあまりとったもの。ならば、私が謝罪するのが筋。どのような事情があろうと許されることではありません。ご無礼を働き申し訳ございません」 事情を知れば付き添いの男が少年の行動を咎めるのも理解できる。 しかし少年に咎は無く、また自分を慮っての行動なのだとすれば、彼が頭を下げるのは馬鹿馬鹿しいではないか。 そう思うと、急に落ち着かなくなる。 謝罪をしていても自分のように惨めに見えない。 やはり、彼は悪くないのに謝るのは――正しい事だとは思えなかった。 すっと顔を上げ、真っ直ぐと見つめて来る。 眼力と言うのだろうか。 相手の動きを縛る強さがある。 春の光を纏い花弁が遊ぶ。 髪の毛が揺れ毛先まで艶めく。 綺麗な子だとしばし見惚れた。

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