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第2話
始めて出会った春以降。錦は月に、二・三回の頻度で秋庭家に訪れた。
週末の十四時から十六時までの二時間が夢の様な時間だった。
家族がいたから、勿論二人で会う訳では無い。
それはそうだろう。
錦は自分に用がある訳ではないのだから。
それでも、やはり会えるのは嬉しかった。
約束の週末が何時も待ち遠しい。彼が訪れるまでの時間は気が遠くなる程に長く感じる。それなのに、会えば時間はあっと言う間に過ぎて行った。
過ぎ去れば、切なくて寂しい。
そして、すぐに次の週末を心待ちにする。
給仕人など居ないこの家では、家族の誰かがテーブルセッティングをする必要がある。自分はその役目をすすんで引き受けた。
付き添いも無く整えられた客室に入っても、緊張の欠片すら無い。
焼き菓子を前にしても、喜色を浮かべることはしない。
錦は案内された客室で行儀よく椅子に腰かけて、マイセンの白いティーカップを傾ける。
錦が自分が淹れた紅茶を飲む姿に胸の内が震えた。
その優雅で美しい姿を見るのが何物にも替え難い喜びだった。
生きていて、一番幸せな時間だったと思う。
くすんだ水に一滴の青いインクを垂らしたように、鮮やかに美しく。灰色に淀んだ憂鬱で退屈な日常が一変した。
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