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嫉妬

珍しく兄弟全員が揃った午後が、丁度錦が来訪する日と重なった。 折角だから全員で錦を出迎えようと言いだしたのは、姉だ。 十四時きっかりに訪問した錦は、出迎える人数に目を丸くして皆の顔を見返す。 あどけない仕草だ。 兄が笑いながら小さな背に手を添えて客室まで付き添う。 案内は、いつも自分がしていたのに。 ちりちりと胸に火が灯る。赤く焼け焦げていく胸の内で、諦めてばかりの自分が嫉妬心を抱いたことに愕然とした。 初対面の時とは違い、兄は随分と砕けた口調で錦に接していた。 兄は子供が嫌いだ。 一言で言えば、鬱陶しいらしい。 近所に住む子供も、創立記念パーティーで会う会社の上司や取引先の子供を動物的だと嘲笑した。煩くて、理性が無くて、馬鹿だから。 更に加えれば、綺麗に着飾っていても不細工なので見苦しいと言う有様だ。 弟はそれなりに可愛がられているが、自分は良く見下され馬鹿にされる。 兄が嫌う子供の要素を多く持ってるので仕方がない。 しかし、兄は錦にだけは嫌悪を向けた事は無い。 何方かと言えば、好意的だ。 年齢を忘れる程の聡明さに幼いながら完成された美しさ。 感情を見事にまでコントロールできる理性を兼ね備えている。 兄が嫌う理由は無く、寧ろ好ましいと思うのは至極当然のことなのだろう。

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