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第1話

――昨晩は雷が凄かったね。夜、寝れた? ――あまり眠れませんでしたが、体調に問題はありません。 ――怖かったね。 ――怖くはありません。ただ、大きな音は苦手です。 ――私は怖かったよ。 ――……怖いのですか? ――夜寝れない程に。 ――休まれなくて宜しいのですか? ――大丈夫だ。君とも過ごせるし良い休日になったよ。 リップサービスか本心かは不明だが機嫌は良い。 親し気に優しく話す兄を見上げて、錦は時折なにやら言葉を返している。 客室に辿り着くまで、錦は此方を見る事はしなかった。

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