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第2話

錦にとっては訪問先の家に居る一人にすぎなくても、自分にとって視界に収まる相手は錦唯一人なのだ。 錦しか見えていない。 錦だけなのに。 それなのに、錦は此方を見る事は無かった。 何時もの様に労りの言葉も無い。 それどころか、まともに言葉を交わす事すらできなかった。 交差することの無い視線。 自分以外の誰かを優先する声、言葉、視線、表情。 まるで透明人間になった気分だ。 折角の時間が勿体なく感じ心待ちにしていた筈の週末は、ちっとも楽しくなかった。兄たちの所為で台無しになったとさえ思った。 それでも錦の顔を見れて、彼の声を聞くことが出来たことは嬉しかった。 それが唯一の救いだった。

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