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第3話
何時もの客室でティータイムを過ごす。
しかし何もかもが何時もと違い、その全てが気に入らなかった。
何時もは白い花器に大輪の白百合を飾った。
それが今日はテーブルを飾るのは旬を迎えた芍薬のアレンジメントだ。
グリーンを交え、濃い赤と淡い桃の二色の芍薬は確かに綺麗だが、錦のイメージではない。
紅茶は真っ白なマイセンのティーカップを選んで淹れていたのに、ハンドペイントで絵付けされたロイヤルコペンハーゲンのティーカップとソーサーが錦の前に置かれているのは、テーブルセッティングを姉と兄がしたからだ。
唯一錦に対し出来る事が兄達に奪われ、その全てが錦のイメージではない。だから怒りに似た気持ちさえあった。
錦には赤や桃の芍薬より、大輪の白百合が似合うしティーカップも真っ白で丸みを帯びたデザインが似合うのに。
彼には純白が似合うのだ。
錦には――彼に似合うものはすべて自分が選んでいた。
この家で、自分以上に彼の為に何かをしようとする人間など居ない。
だから、錦には似合わないものばかりを恥ずかしげも無く、その目に晒すのだ。
錦は何も感じないのだろうか。
何時もとは違うと口に出さないのだろうか。
違和感を期待した。
それなのに。
錦は此方を見ないし、いつもと違うテーブルセットを見ても何も言わない。何事も無いように、ティーカップを唇に運び花を見る。
自分以外の人間がセッティングしたこのテーブルが――辛辣とまでいかなくとも、不評で有れば良い。しかし期待とは逆に赤い芍薬に関心を示した。
「赤い芍薬は初めて見ました」
「綺麗でしょう? ――いつも同じ花ばかりだから」
「芍薬は今が旬でしたね」
腹の奥でカッ怒りが渦巻く。
恥をかかされたと思った。
怒りを静めようと深呼吸をする間に、すでに彼らの会話は音楽へと移り変わっていた。
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