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第1話

「本当は秘密なんだけどね」 「害虫問題は別に珍しい事ではないだろう」 「家族は皆、錦君にだけは秘密にしたかったんだ」 「……裏切者なのか?」 「うん。だから、これは錦君との秘密。本当に毛虫凄かったからさ。見せたくなかったんだ」 害虫駆除に合わせ、今は剪定された枝を見て当時の状況を思い出す。 ざっと鳥肌が立った。思わず腕を擦る。 「ぞっとするね」 「鳥肌が立った」 咲いて散るまでは綺麗だが、散った後は見るに堪えない。 それでも、裏庭の桜が一番好きなのだ。 同じだと、錦も今は無い桜をもう一度見上げる。

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