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第2話

風に揺れる優美な枝垂れ桜、豊麗な趣の八重桜。 薄紅、桃、緋色、白、黄色。色も鮮やかな物から淡いものまで、幾つかの品種で整えられた主庭の桜を親兄弟は誇らしげに客人に紹介をする。 鮮やかな色の早咲きの桜から始まり、遅咲きの八重桜が終わるまで自宅の庭ながら絶景と言えるほどに見事なのだ。 しかし、壮観と評判の主庭より錦は儚くも狂い咲く裏庭の染井吉野が好きだと教えてくれた。 理由は単純で彼にとっての桜は、馴染みのある染井吉野だから。 この家の自慢の表庭の桜を皆が勧めるから、裏庭の桜の方が好みと言い出しにくかったのだろう。こっそりと教えてくれた時、嬉しくて満面の笑みで頷いた。 こうして自然と笑えることが出来るのは錦と居る時だけだ。 「本当はね、ここは殆ど普段誰も来ないんだ。見て」 今は無い桜を指さす。 学校や公園、市民会館などに植えている何処にでもある桜だよ。凄く綺麗だけど、普通の桜は誰も見向きしないんだ。 枝垂れ桜とか八重桜ばかりに目がいっちゃうんだね。

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