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第3話

誰も見向きもしないから、ここは自分だけの特別な場所になってしまった。 だから、あの日ここに居たんだ。 まさか人が来るとは思っても無かったから。 沢山怒られたけど、錦に会えたから良かった。 きっと、運命だった。 絶対に運命だった。 そう告げれば錦は滲み出る様に淡く微笑んだ。 殆ど喜怒哀楽を表に出さない彼が、稀に見せる表情だ。 笑い返すと、まるで思いが通じ合ったようで嬉しい。 答えて貰えたと信じることが出来て安心できる。 錦と同じと感じる事が増えると、微かな万能感を感じた。 他の誰かでは駄目だ。錦だから同調することがこんなにも心地良い。 気分が高揚して、ふわふわと至福の時を漂い、そして胸の奥が軋む。 ――まただ。また、これだ。 温かく満ちていた胸が苦しくなる。 内から溢れそうな程に、胸の奥が張りつめてぱちんと弾けそうになる。

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