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第4話

凌霄花が鮮やかに咲く季節、額に汗を滲ませながら窓の外を見る。 錦も、蒼空の下で花開く夏の花を見ているのだろうかと、一人想像し密やかに楽しむ。 季節の花は数多くあるが、錦に似合うのは純白の百合だ。 だから何時もの様に百合の花を生花店に頼み、次に紅茶のストックを確認する。 定位置に腰かけ、優雅にマイセンのティーカップを持つ姿を心待ちにする。 しかし週末になっても錦が現れる事は無く、来週、再来週と約束の週末が過ぎていく。 そして、ついに一月を終えてしまう。 しかし――それでも、彼が訪れる事は無かった。

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