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打ち壊す
更に半月後。
まだ、暑さが尾を引く季節。
もう夏が終わると言うのに、あらゆる場所で蝉は求愛行動を続ける。
添い遂げる相手に見つけて貰うために、何時までも叫ぶ。
応えが返って来るかも分からない叫びは幾重にも混ざり合い共鳴する。
力強く最後の声を響かせ、一晩経てばアスファルトに乾いた体を落とし躍動の季節は終わりを告げる。
そして夜には、徐々に涼やかな虫の音が響き始めた。
劈く蝉の鳴き方とは違い、密やかな羽音が夜を覆う。
風が冷え、青々とした草木が赤く染まる季節へと移り変わる頃には、錦と会えない週末が当り前になり、日常になっていった。
錦と出会う前、誰にも認めて貰えない、誰にも必要とされない無意味な生活に還っていく様は、枝だけを残した桜樹の葉が地に落ちて土に還るのに似ている。
腐って萎んで死んでいくようだ。
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