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第4話
何一つ変わりない姿だった。
何も無かったかのように、名前を呼ぶ乳臭い声。
スーツを着こなす華奢で小さな体。
磨き上げられた靴には傷一つない。
すっと伸びた背。
艶やかな髪。
肌理の細かい肌。
黒目がちの瞳。
何一つ変わる事の無い姿が、暗く凝り悲しみを反芻するばかり日々を打ち壊す。
悪夢が終わりを告げる様に血が細胞が沸騰し騒めく。
錦だ。錦が目の前に居る。
花弁よりも可憐な唇が動き、名前を呼ぶ。
夢じゃない。現実だ。
――錦。
呻き、シャツの胸元を握る。
張りつめた胸がついに裂けて弾けた。
熟れて腐りかけた香り。甘くて粘着性のある汁を撒き散らして、真っ赤に視界を染めた。
ようやく再会出来た瞬間、嬉しかったのに啜り泣きが大きな声に変わり、そのまま膝から崩れた。
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