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第3話

渡された箱は大きさの割に重さがある。 社会科見学の行き先を考えれば、硝子細工だろう事は想像に難くない。 皆の所に行く前に、どうしても中が見たかった。 はやる気持ちを抑えて箱を開けると、光沢を放つ薔薇が鎮座している。 茎や葉はなく、花の部分だけを模したペーパーウェイト。 そっと持ち上げると、ひんやりと肌になじむ。 薔薇を包み込んだ掌が、興奮がどくどく脈打つ。 「有難う。大事にするね」 その日は一日中夢心地だった。 家族皆が揃う茶会で、何時もは居心地悪く縮こまっているけど今日は違った。 頭の中には、艶々とした硝子の薔薇が浮かんでいた。 兄達には用意していなかったけど、自分には用意していた土産。 何時も蔑ろにされつま弾きにされる自分が、錦に選ばれたのだ。 錦に選ばれた――錦が硝子工房で自分の事を思い出し、自分の為に選んでくれたのだ。 何て甘美な響きなのだろうか。 生まれて初めて誇らしいと感じた。

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