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第1話

『――謂れの無い非難に謝る必要も傷付く必要なんてない』 応えたい。応えなくてはいけない。 錦が肯定してくれたのに、心の奥底では救われながらも常に否定的だった。 でも、だって、を常に前提として錦の言葉を裏切っていた。 それは、錦を信じていない事になる。 それは、駄目だ、 自分の根源を揺るがす事態だ。 肯定してくれた、救われた。 表層しかなぞらなかった。何故、肯定してくれたのか。 その要素は何処にあったのか。 錦の瞳に何が見えたのか。 それを自分は考えたことは無い。 錦は自分を宥めたのではない。 彼は、自分が無価値ではないと知っていた。 何も悪くはない、劣等感など感じる必要はないと分かっていたから出逢った時から答えを差し出してくれていたのだ。 それを、履き違えた。 ――やはり、彼は神様だ。

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