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第3話

冬の尾を引く青天より清廉。 艶やかに飾られる春よりも麗しい。 舞い散る花片よりも可憐。 静謐でありながら時折威嚇する様な圧を孕む空気。 家族に責められ泣いた自分を守る桜の花弁越しに相手を射る視線。 『――貴方は悪くない。だから、堂々とすれば良い。思いつく限りの言葉で言い返せば良い。怖がらずに抵抗すれば良い』 『間違ってるのは彼らだ』 ――錦なら、きっと。 「何が言いたいの」 意図して冷やかな声を作れば、姉は一瞬怯む。 まさか、言い返すとは思わなかったのだろう。 そして、すぐに不機嫌な顔をしてみせた。 反抗的な態度に腹を立てたのかもしれない。 どうすれば錦の様に威圧できるのか、言葉を探すが見つからない。 「――何考えてたのか知らないけど、貴方凄く気持ち悪い顔で笑っていたよ。錦さんも驚いていたわ。本当に、恥ずかしい」 「浮かれるのは分かるが、調子に乗るなよ」 調子に乗ってるのはどちらだ。 胸がチリチリと焦げ付く。 よくもそんな酷い言葉を吐けるものだ。 やはり、そうだ。 劣っていたのは自分ではない。 彼らだ。 こんな事を平気で口にする人間が錦と親し気に話していると思うと、怖気が走る。 切っ先を隠しながらも、背中には凶器を潜めている。 本性は隠し通せるものではない。 いつか彼らは、その醜さで錦を傷つける。 自分を切り裂くように、あの美しい少年に刃を向けるのだ。 居なくなれば良いのに。 錦以外消えてしまえば良いのに。

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