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第3話
「――貴方は寂しいと感じる?」
それは錦同様に他に休日を過ごす相手の居ない自分に対する質問か、錦自身の答えに対する質問か判断できない。
「感じないよ。錦君と過ごせて嬉しいから」
判断出来ないから、錦に会いたかったことを伝える。
一緒に過ごせる喜びを素直に口にした。
他人に望まれて嫌だと思う人間はきっといない。
「でも錦君が居ない休日はつまらなくて寂しいよ」
錦は短く「そうか」と返すのみだ。
「この家に来ない時は何をしてるの? ご両親と過ごすの?」
友人ではないなら家族と過ごすのかもしれない。
両親の笑顔に囲まれて優雅に紅茶を飲む錦を想像する。
それとも、教育係と過ごしているのか。
「習い事とかしていないの?」
少しプライベートに踏み込み過ぎたかと思ったが、錦の表情は変わらない。
「誰とも過ごさない。大体一人で過ごしている」
予習復習、音楽鑑賞、読書にウォーキング。
偶に図書館のロビーで行われる展示会を見て回っているそうだ。
「父も母も多忙だから殆ど留守だ」
「あ、うん。うちもそうだよ。お父さんたち忙しいし家族みんな揃う事も滅多にないもの」
言い訳がましい物言いになったが、錦は「何を慌てているんだ」と気にもしていない口調だった。
寂しさなど知らないような瞳だった。
誰かの温もりの必要性を感じていない彼に一層の親近感がわいた。
自分も一人だと言うと、錦は物憂い気な顔を見せて小首をかしげた。
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