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冷やかに調律された声

「でもさ、皆口うるさいから一人の方が楽だな。偶に夕飯の席に皆が揃うと、一家団欒ってより集団リンチに会う気分だもの――錦君には分からないか」 彼なら怒られることも謗られる事も無いだろう。 嘲笑と無縁の人生。 彼の相応しい、華やかな過去と未来が結びついて続く。 自分と違い、錦は、錦なら。 「錦君は怒られるより褒められる方が多そうだね」 留守がちの両親との家族団欒をどのようなものか興味が湧く。 普段会えない錦との貴重な時間なのだから、たっぷりと甘やかすのだろうか。 それとも、お節介を焼いて錦に鬱陶しがられるのかもしれない。 「ねぇ、留守がちって言っても、夕飯とかは一緒に摂れるんでしょう?」 錦の話を聞く父親に笑顔の母親。 彼の両親なのだから、美男美女に決まっている。 錦は父親に褒められてはにかむ。 母親は二人のやりとりを幸せそうに見つめるのだ。 存分に構ってやれなかった時間を埋め合わせるには十分すぎる程の愛情。確固たる親子の信頼関係。 食卓を囲む時に緊張や不安などとは無縁の楽し気な話声。 テレビCMに有りそうな団欒のひと時が目に浮かぶ。 良いな。羨ましいよ。 君みたいになれたら、きっと人生楽しいんだろうな。

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