105 / 218
第2話
「先程も説明した通り両親は多忙だ。彼らの社会的立場を考えても小学生の俺とは生活リズムが合わないから、顔自体滅多に合わせる事は無い。食事は一人で済ませている」
「え?」
「貴方の想像している一家団欒とやらは特に無い」
無意識に地雷を踏んだかと、慌てて言い訳を探す。
「し、食事は、お母様がちゃんと作ってくれるんでしょ? 忙しくても、優しいじゃない」
そこで錦は不可解な物を見る目をする。
「炊事は家事使用人がしている」
そうだ。
朝比奈家には使用人がいたのだ。
専任の料理人が食事を作るのだから、彼の母親が料理をするはずはない。
秋庭家には給仕が居ないので失念していた。
「次の質問の回答だが、特別な事は何もしていないから怒られたり褒められたりすることも無い」
彼は少しだけ声の調子を落とした。
「え? 嘘。謙遜しなくても良いのに。褒められる事は多いでしょう? 錦君はお勉強も運動も、芸術も卒無く熟しているってお父さんたちが話してたよ。物凄く優秀な子だって皆言ってるもの」
そこで盛大な溜息をつかれる。
呆れたかのような顔だ。
ともだちにシェアしよう!