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第3話
錦が自分を救い上げてくれたのは、もしかしたら互いに同じ境遇だと知ったからではないか。
錦だけがこの苦しみを理解できたのも、彼もまた同じ痛みを持っていたから。
それが理由なら何故自分が選ばれたのかあっけないほど簡単に理解できた。
ならば錦の孤独を癒せるのは、きっと自分にしかできない。
錦の理解者になれると思いながら、ただ彼が歩み寄るのだけを待ち続けた。
何一つ自分からはしていない。
確かに、錦が孤独なのは彼を理解できない周囲の所為だ。
そして、自分もそこに含まれている。
錦だけが抱えた傷と孤独を癒してくれた。
理解してくれた。だから錦の救いになりたい。
錦は自分に価値を教えてくれた。
だから己に無関心な錦に彼自身の価値を教えたい。
救い上げてくれたのだから、錦を救い上げたい。
錦が冷やかに彼自身を突き放すなら、何度でも手繰り寄せたい。
彼が己を抱きしめる事すらしないなら、この腕で彼を抱きしめたい。
固く抱きしめて、その胸に火を灯すのだ。
最初から、そうすれば良かったんだ。
挫ける事を知らない強さを持ち恒星の輝きを放ちながら、それを打ち捨てる様に彼は彼自身に興味が無い。享受すべき愛情も祝福も望まない。
それは、彼という根源そのものを揺るがす事であり、自己否定の極みでもある。
完璧でありながらも、彼は余りにも危うい。
錦の空虚を垣間見て激しく揺さぶられた。
烏滸がましい事であろうが――でも、もう放っておくことが出来なかった。
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