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第3話

「落ち葉の掃除を怠ると害虫被害のリスクが有りますが」 「スタッフが適度に掃除してるよ。オーナーはね、もっともらしい事を色々言う様だけど、単純に面倒くさがってるだけなんだ。――今、笑った?」 「いいえ笑っていません。どちらかと言うと、呆れました」 「何だ。気のせいか。笑ったかと思ったんだがね」 「業者に依頼すれば良いのに」 「無頓着なんだろうね」 今まで体験した事の無い強烈な不快感が腹から喉へ這いあがる。 消化しきれない思いはヘドロになりタプタプと音を立て満ちていく。 「確か日本文化の体験目的で、留学生に茶屋の貸し出しをしたのが切っ掛けで人気が出たんですよね」 「人気と言うか知名度が上がった、が正しい。SNSの威力だ。先ほど見た柿の木も載せられてるよ。それでも利益になる程の客足にはならない」 「実際軌道に乗ったのは、リアントグレス社の社長夫人がお忍びで日本観光をした際に、大学生になる長女が柿の木をバックに夫人とのツーショット写真をインスタグラムに投稿した後でしたか」 「そう。マーガレット嬢の所為でベティ夫人の観光がお忍びじゃなくなってね。オーナーはインスタ映えを狙った若いお嬢さんたちから、留学生や、在日外国人、外国人旅行客をターゲットに切り替えて茶事だの茶懐石料理だの始めたら大当たり。中々の評判でね。茶道体験や茶懐石教室を始めるって改装したのさ。それで、リニューアルオープン前に来てほしいって言われたんだ」

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