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第5話

「今更だけど、どうして和装じゃなかったのかな。少し楽しみにしてたんだけど」 「慣れないので。――貴方もそうじゃないですか」 「慣れないからね。恥はかきたくない」 誰が聞いてもわざとらしい話のそらし方をして、軽口を叩きながら露地をすすむ。 二人の間に割って入り、錦の腕を掴めたらどんなに良いだろう。 そこまで考え、自分が怖くなる。 彼の腕を掴んで、それでどうしたいのか。 どこか遠くに攫いたいのか、自分を見ろと言いたいのか。 それとも、彼を自分の方にただ引き寄せたいのか。 間違えて繋いだ回路同様に、感情の転換が上手くいかない。 ただ、全てが望まない方向へ傾きつつあることだけは理解できた。

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