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第5話
「しかし、今日は暑いですね」
「まだ六月なのにこう暑くては、八月が怖いな」
「錦様は夏が苦手そうですね」
「確かに、苦手だ。しかし悪い季節では無い」
運転手が続きを促すが錦はシートに身を預けたまま瞳を閉じる。
頭痛がする。後頭部、こめかみ、どの部分が痛いのかが分らない。
薄く瞳をあげると、街路樹がアスファルトに影を落としている。
陽光を受けた白いコンクリが眩しいくらいだ。
夏は苦手だ。
しかし悪い時期ではない。
むしろ良い季節だ。
夏はあの男と、義兄である海輝と出会った時期だ。
そしてまだ学生である二人は夏休みになれば一緒に過ごすことが出来る。
夏は暑くて過ごしにくいし、体調も崩すし苦手な季節だった。
しかし、それを帳消しに出来るほどの良い事が沢山あると、海輝と出会ってから知った。
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