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第12話
「話は変わるがゼリーを作る場合、果物は何が良いだろう」
桃を使うのは決めている。それ以外の果物を使用するなら、時期的にパイナップルだろうか。あとはサクランボ位しか思いつかない。
「……質問を質問で返すようになりますが、どなたが作るのですか」
「俺だ」
「錦様が」
「そうだ」
「ゼリーを」
「義兄は甘くて水分量の多い果物が好きだから、桃は外せない。しかし桃は切るのが難しそうだ」
先に綺麗に切る方法から調べなくてはならない。
「刃物を持たれるのはまだ早いと思います」
「そんな事は無い。調理実習で包丁を手にする機会はあった」
「使われたのですか」
「いや、全く」
機会があっただけで、使用は出来なかった。
何故か同じ班の女子が包丁を取り合い、男子は触らせて貰えなかったのだ。得意げに包丁を使い、錦をチラチラと見てきた。
まさか意地悪をされているのだろうか。果たしてこれが意地悪になるのだろうかと疑問に思っていたら、同じ班の男子が「君に良いところを見せたいんだよ」と耳打ちして笑った。
「――と、言うことがあり使用は出来なかったが問題ない」
「いいえ、問題ですよ錦様」
「使い方は分るので後は実践だ」
「テーブルナイフでも桃くらい簡単に切れますよ」
「用途が違うじゃないか。そんなに言うなら果物ナイフを使う」
使ったことは無いが、果物ナイフなら扱いもそう難しくは無いだろう。
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