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第2話
敷地内通路はウォーキングコースも兼ねているのか、案内板が所々に立っている。近道をするべく広場沿いの通路から南側のバラ園に入る。案内板にはバラ園で区切るようにして右手にアスレチックエリア、左手に多目的広場があるのだが人影は無い。バラ園を抜ければその先に広大な池に面した休息所に辿りついた。
花の時期になれば見事だろう藤棚の下に設置された自動販売機。
側の木製のベンチには一人の少女が腰掛けている。
長い髪と下がり気味の肩。
記憶そのままの背中。
ただ、その後ろ姿が錦には別人のようにも見えた。
丸めた背中が彼女らしくない。
生気が抜けたような後ろ姿だった。
「紗江」
ベンチに腰かけたまま、上半身をかしげる様にして少女が振り向く。
一つに纏められた髪の毛が揺れる。
淡い水色のシャツにはレースも刺繍も無い、極シンプルなデザインだ。
行儀良くそろえた足は白のパンツスタイルにフラットシューズ。
飾り気が無く大人びた雰囲気に錦は僅かに戸惑う。
「すまない、遅れた」
時刻は十四時五十五分。紗江はいつから待っていたのだろうか。
「遅刻何てしてないよ」
「でも、待たせてしまった」
「そんなに待ってないから気にしないで。――久しぶりだね錦君」
「二年ぶりだな」
――二年か。
二年ぶりの再会は季節外れの花が描かれた手紙から始まった。
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