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第5話
「パンツスタイルは始めて見た」
「そっか」
確かに紗江は可愛らしいものを好んだ。
しかし好みは年齢と共に変わるものだ。
錦は彼女のパンツスタイルを初めて見たが、錦が知らないだけで普段はパンツスタイルなのかもしれない。
もしかしたら、記憶にある紗江の装いは「よそ行きの姿」だったのかもしれないし、錦の訪問に合わせて親の好みで着せられていた可能性もある。
――今となっては如何でも良い事だ。
「変?」
そう笑う彼女に錦は小首をかしげる。
「似合ってる。ただパンツスタイルは初めて見たから新鮮だと思った」
無難な言葉だった。
正直、彼女がスカートだろうがパンツスタイルだろうが錦は興味ない。
ただ、あの頃と雰囲気が違うと思う程度だ。
しかしそれを馬鹿正直に口にするのは憚られる。
野暮だろうし、相手を不愉快にさせる可能性がある。
対して錦は定期検査の後、そのまま待ち合わせ場所に移動しているので制服のままだ。紗江は隣に腰掛けた錦を無遠慮に見る。
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