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第7話

二人で居るのに埋められない距離。 言葉が途切れて首筋に伝う汗を拭う。 生ぬるい風と耳障りな蝉の鳴き声、気怠い午後。時間だけが過ぎる。 用がないならこのまま帰りたいが、それが戸惑われる空気だった。 「――それにしても暑いな。場所変えないか?」 「私はここで良いよ。木陰でじっとしてると結構涼しいし」 先ほどまで炎天の下を歩いていた錦の体はまだ火照っている。 対して紗江は――一体いつから待っていたのか――動かずに座っていたからか、この暑い中でも平気そうだ。 何処でも良いから涼しい場所に移動したかったが、紗江がここで良いというならば仕方が無い。もしかしたら、短時間で済む話かもしれない。 若干がっかりしながらも、そろそろ本題に入るかと考える。 「随分と痩せていたから驚いた。体調はもう大丈夫なのか」 「うん、色々あったんだ」 彼女の言う「色々」の意味を尋ねたかったが、紗江の笑顔を見ると出来なかった。削がれた頬が描く直線的なラインから視線を外す。 痩せただけならば、外見を気にして理想とするスタイルを目指した結果ともいえるが紗江の場合は違う。適応障害とうつ病の発症による物だ。 疲れて、病んだ表情。 膿爛れたような空気。暗い眼差しのまま微笑む顔が儚い。 艶のあった髪は櫛を通していないかのように毛先が縺れている。肌は青ざめ色が無い唇は、かさかさと乾き罅割れて痛々しい。 子供が持つ瑞々しさは完全に失われている。

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