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第10話

少し時間を貰い自動販売機で紙パックのジュースを購入する。 茶と水は売り切れていた。桃のミックスジュースと、リンゴジュースを購入して二つ差し出す。好きな方を選べと言えば紗江は迷わずミックスジュースを抜き取る。 「有難う」 「――それで何かあったのか?」 「どうして?」 「あんな手紙貰えば誰だってそう思う。大丈夫だって言ったが、何か俺に話したい事が有ったんじゃ無いのか」 パック裏の成分表を確認し、ストローを突き刺そうとする。しかし、何故かうまくいかない。ストロー穴を覆うアルミ部分が伸びてへこむ。紗江は少し心配そうに見てくる。 「……何故だ」 「錦君開けようか?」 「大丈夫だ。しかしストローの先端が斜状であれば良かったのに」 「私のは斜めになってたよ」 購入したジュースのメーカーが違ったから、紙パックや付属のストローの作りも違うのだろう。 「それは良かった」 三度目でストローを通す事に成功する。 少しだけストローが折れて、ストロー穴からがジュースが滲み出ていたが問題ないだろう。暫く二人でジュースを吸い上げて紙パックが空になると、紗江は「何かもう良いや」と吹っ切れた様な表情を見せた。 「うん、色々あったけど何か錦君の顔見たら元気になった」 「……なんだそれは」 「本当に、大丈夫」 晴れやかな表情を目にして、益々釈然としない気持ちになる。 一体、何なんだろうか。 虚を突かれ一瞬言葉が出なかった。

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