183 / 218
第10話
少し時間を貰い自動販売機で紙パックのジュースを購入する。
茶と水は売り切れていた。桃のミックスジュースと、リンゴジュースを購入して二つ差し出す。好きな方を選べと言えば紗江は迷わずミックスジュースを抜き取る。
「有難う」
「――それで何かあったのか?」
「どうして?」
「あんな手紙貰えば誰だってそう思う。大丈夫だって言ったが、何か俺に話したい事が有ったんじゃ無いのか」
パック裏の成分表を確認し、ストローを突き刺そうとする。しかし、何故かうまくいかない。ストロー穴を覆うアルミ部分が伸びてへこむ。紗江は少し心配そうに見てくる。
「……何故だ」
「錦君開けようか?」
「大丈夫だ。しかしストローの先端が斜状であれば良かったのに」
「私のは斜めになってたよ」
購入したジュースのメーカーが違ったから、紙パックや付属のストローの作りも違うのだろう。
「それは良かった」
三度目でストローを通す事に成功する。
少しだけストローが折れて、ストロー穴からがジュースが滲み出ていたが問題ないだろう。暫く二人でジュースを吸い上げて紙パックが空になると、紗江は「何かもう良いや」と吹っ切れた様な表情を見せた。
「うん、色々あったけど何か錦君の顔見たら元気になった」
「……なんだそれは」
「本当に、大丈夫」
晴れやかな表情を目にして、益々釈然としない気持ちになる。
一体、何なんだろうか。
虚を突かれ一瞬言葉が出なかった。
ともだちにシェアしよう!