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第2話
「今思い出しても、おかしい」
「何かしたのか」
「兄さんたちも居たのに、海輝さんね菓子パン取り出したんだ」
「……菓子パン?」
話が見えない。聞き間違いかと思いもう一度確認すると「人気すぎて直ぐに売り切れになる期間限定のメロンパン三兄弟」だってと笑う。
海輝がそう説明したらしい。
何故菓子パンなんか持ち歩いていたんだ。
三兄弟とは何だ。
思わず額を押さえる。
「何が何だか分らない」
「御免っ違うの。私の為なの」
「何故、紗江のために菓子パンを持ち歩くんだ」
海輝は常識を知ってるのに非常識な振る舞いをする。
だからと言い、何故秋庭家で場違いなことをしたんだ。
いや、何か理由があったはず。思わず縋るように紗江を見る。
「さ、紗江に、食べさせたかったのか? まさか、菓子パンを見舞いの品として持参したのか」
「錦君、そうじゃなくて」
何てことは無い。
呼吸亢進状態の紗江に二酸化炭素を吸わせる為に、海輝は菓子パンを取り出しその袋を使用したらしい。咄嗟に取った行動といえ冷静な判断だ。
「息がうまく出来なくて苦いし意識が遠くなって死ぬのかと思った。海輝さんのお陰で助かったの」
「そうか、それは素晴らしい」
しかし、紗江が笑ったのはその後の海輝の行動だった。
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