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『――明日、私は死ぬだろう』

自宅に戻ればすでに十八時を過ぎるところだった。 夕食の準備をしている使用人から、錦宛てにレターパックが届いていると報告を受ける。差出人の名前を聞くが知らない人物だ。 手渡された郵便物の筆跡を見て送り主が誰か理解する。 自室に持ち込み開封をすると中には洋形封筒が入っていた。 差出人名は秋庭 紗江だ。 使用人や家人の目を気にし偽名を使ったのだろう。 証示印を確認すれば昨日の日付だった。 紗江は錦に会えないと思っていた。 だから見舞いの礼を手渡しできると考えていなかったから、昨日のうちに投函したのだろう。紗江は郵便物のことは何も口にしなかったが特に気にするほどの事でも無い。普通郵便ではないあたり確実に錦の手に届くようにしたかったのだろう。父や母が手にしたら錦の元に届くかは不明だが。 封筒のフラップをそっと剥ぎ中を取り出せば、葉書サイズのメッセージカードが一枚入っている。 細い線で書かれた一重咲きのアネモネが描かれていた。 過去海輝が教えてくれた花弁の無い花。 丸いフォルムに行儀よく並ぶ萼片は花弁状に開いている。 その中心に緻密に描き込まれた花芯。 紗江が一番好んだ花だ。 花は閉ざされた小箱の傍らに無造作に置かれている。 ただ、小箱は丁寧に色付けされているのに花はモノクロだった。 茎も葉も真っ白なので、敢えて色を付けなかったのだろう。 裏面には「返事はいらないよ」と書かれている。 錦を呼び出した手紙と同じだ。 返事を出させないくせに、一方的に何かを伝えて来る。

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