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第1話
花の絵を写真立てに飾った翌日に錦宛てにまた郵便物が届いた。
差出人は昨日と同じ人物川田 典子こと秋庭 紗江からだ。
消印は昨日だ。
錦と会う前か会った後かは分らないが、追跡サービス付きで郵便物を連日送る理由は何なのだろう。
中にはやはり洋形封筒が入っている。
封筒の差出人に書かれた本名。
中身も予想通り絵が入っていた。
薔薇と蝶の細工が美しい小物入れと花の絵が描かれていた。
薄く開かれた小箱の蓋に挟まる黄色い花。
箱の傍らには同じ黄色の花が散らばっている。
四枚の花弁に雌しべを囲む数本の雄しべ。
菊に似た葉。
――何の花かは全く分らない。
素朴で贈り物や花束にはまず使われないだろう。
裏返しても何も書いていない。
ただの絵だ。
ただの絵なのに、不穏だった。
それに、二日にわたり送られる絵に流石に奇妙だと思えた。
紗江の何か話したくて話せないその顔。
言いたいことを飲み込んだ口元を思い出す。
閉ざされた箱の蓋から覗く花。
傍らに千切れちらばる花。
無言のメッセージ。
紗江の白々しい笑い声。
彼女は本当に正気だったのだろうか。
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