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第2話
六月十九日月曜日。
学校から帰ると、使用人から郵便物が届いていると手渡される。
錦は無言で差出人を見る。川野 典子。つまり紗江だ。
追跡つきサービスの郵便物で花の絵を三日続けて送る。
流石に奇妙だと思った。
紗江のあの暗い眼差しがちらついた。
薔薇と蝶の細工が美しい小物入れ。今回は蓋は大きく開けられている。
その中で咲き誇る白い花。波打つ一重咲きの五弁花に黄色い中心部。
それを囲む赤い斑点。
箱いっぱいに納められた白い花の中心に一輪だけ差し込まれた淡紫の花。こちらも同じように濃い赤の斑点が浮き出ている。
芙蓉だろう。母が好きな花だ。
形は、高砂芙蓉に似ている。
繁殖力も強いが花は短命で、夜には終える一日花。
そして開花期間は毎朝花を開き続ける。
紗江から送られた絵で共通しているのは、花と小箱くらいだ。
――メッセージも何も無い。ならばこれは、ただの花の絵でしかない。
しかし、何故連日偽名まで使い花の絵を送るのだろう。
何故、こんなことをするのだろう。
何時までこんなことをするのだろう。
本当に、ただの花の絵なのか。
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