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第3話
夕食の席に着き箸を持ちながらも、やはり絵のことを考えてしまう。
食欲は無いが、残せば体調不良の恐れが有りと父に報告が上がる。
義務的に箸を動かし機械的に皿を空にしていく。
味や見た目など正直どうでも良くて、黙々と口に入れて咀嚼と嚥下を繰り返す。
焼き物の皿に描かれた花の絵を見て、紗江が絵を贈る理由を考える。
一言メッセージを書けば簡単に伝わるのに。
言葉に出来ない思いがあるのだろうか。
あの日、紗江が口を閉ざしたように。
花を贈り物にする場合、目的により種類を選ぶ。
物心ついたときに教育を受けた、目的や状況により贈るべき花と避けるべき花。当時は避けるべき花は簡単に教わり、主に贈るべき花の方を教わった。
例えば紗江はアネモネが好きだが、一度も贈ったことは無い。
基本的な花言葉が、悲恋など負の印象が強いからだ。
色により花言葉は意味を変えるが、贈り物に相応しくない言葉を含む事と不吉な印象の方が強い事、花の毒性に相手が勘ぐりを入れてこないか。これは花の組み合わせや、アレンジメントによりクリアできる問題だ。ならば紗江の好きな赤色のアネモネはどうかとなるが、情熱的な花言葉に年齢的にまだ早いと結論付け別の花になった。贈り物は殆ど付き人が準備していたので、錦は半ばどうでも良い気分で報告を受けていた。
贈る花に思いを込めることは珍しくない。
――紗江の目的は、花言葉の方だろう。
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