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第10話

年齢を忘れる程の聡明さを大人達は称える。 幼さの無い彼を子供達は完璧だと憧れる。 彼は特別だから。 特別故に孤独だった。 聡明さ故の孤高、特別故の孤独は異端と変わりない。 触れ難い神聖さは出会う誰をも魅了しながらも誰にも理解されない。 初めて錦の真実に触れた気がした。 皮肉な事に愛される筈の要素が、彼を孤独にしていたのだ。 ――誰も彼を理解できなかった。 錦は強靭で正しい。その他大勢は弱く愚かだから。 そして等しく誰も彼を理解しようとしなかった。 彼は難解であり、紐解く事は――清らかな水に手を入れ掻き混ぜ濁すような――背徳を感じる。神秘的な少年のリアルは、暴くには侵しがたい偶像の聖性を秘めていたから。 彼自身を真に理解し傍に居る相手は誰も居なかったから、彼は孤独だった。 誰もが、幼い彼を一人でも大丈夫なのだと信じ込んでいた。

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