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第3話
しんと静まりかえった部屋に錦は一人だ。
時計の秒針が進む音が小さく聞こえる。
昨夜はあんなにも張り詰めていたが、一気に緊張が緩む。
全て杞憂だ。
実際は何も、起こらない。
そんな都合の良い事を考えてしまう。
昨日はどうかしていた。
何事も無い。昨日と引き続き大して代わり映えの無い日常が続くと信じてしまう。
根拠無くそう思いながら、やはり電話の前に立った。
受話器を取り上げたところでインターフォンがなる。
モニターで確認すれば笑顔の配達員。
手には見慣れたレターパック。
ここ数日で見慣れた専用封筒。
錦は当惑を滲ませ玄関の引き戸を開ける。
延段を小走りで駆け、門扉前で待つ配達員から封筒を受け取る。
差出人は川野 典子。
中身が何かは開封しなくても予想は出来る。
四通目のそれは手の中で酷く重く感じた。
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