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第3話
親愛の情や喜びなど欠片も無い彼らに対し特別に何かを思うことは無い。
確かに彼らに愛されていた。
必用とされていたし、望まれてもいた。
存在を祝福されていた七歳までの思い出は、過去のものでしか無い。
惜しんでも、もはや手にすることの出来ない。
過ぎ去り戻ることの出来ない過去なのだ。
価値がなくなり望まれなくなった自分が、子供故に愛される事が当たり前など、そんなお伽噺を信じるほど幼くも無いし夢見がちでもない。
取り戻せない過去に喜怒哀楽を乗せるのは、無駄な行為でしかない。
それを知ったのも、路傍の石を見つめる如き無関心な眼差しだ。
何を思っても事実は変わらない。
何度問いかけようと変わらぬ答えに――己が何者かを思い知っただけだ。
彼らの眼に映る錦がガラクタなら、ガラクタから見る彼らの存在は何なのだろう。
伽藍堂。
それなのに、空っぽのその場所に埋まる何かを探す。
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