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大学に入っても、できるだけ人と関わらないようにしてきた。入学アルバムで眼鏡を外したのは、同一人物だとバレにくくするためだ。
講義で努を見るたびに、省吾の姿と重なって胸が苦しくなった。このままお互い関わらないで卒業したかったのに。
努は忘れてるかもしれないが、入学式で努の左隣に座ってたのは僕だ。右隣の峯岸と仲良く話していて、僕のことは視界にも入ってなかっただろう。
入学式が終わって、階段を下りるときに後ろから押されて転びそうになった。その時、前を歩いていた努にぶつかってしまった。
「す、すみません···」
「俺は全然大丈夫だけど。けがしてない?」
大きな体を折りたたんで、目線を合わせて話してくれた。
「···だ、大丈夫です」
「そっか、それならよかった」
そう言って人混みに消えていった。
それから時間は流れ、1年の冬にまた努と話す機会が訪れた。体育館にスマホを忘れて取りに行ったら、努が1人でバスケの練習をしていた。長い手足でドリブルやシュートをする姿から目が離せなかった。
「どうしたの?」
見てるのに気付かれた。
「···あ、あのスマホを忘れて」
「もしかしてこれ?」
そう言って、ポケットから取り出したのは僕のスマホだった。
「それです」
受け取ろうとすると、スマホの代わりにボールを渡された。
「シュートが入ったら返してあげる」
「···は?」
何を言ってるのか全然分からなかったが、汗が滴る笑顔が眩しくてやってみることにした。
運動は昔から苦手で、何回か挑戦したが全然ゴールに届かなかった。諦めようとしたとき、後ろから手が添えられた。
速くなる鼓動が、聞こえてしまわないか心配になるくらい近くに努がいた。
「こうやって投げるんだよ」
2人で放ったシュートはゴールに吸い込まれた。
「は、入った···」
「はい、じゃあ約束通り返すね」
そう言ってスマホを渡された。
「もう忘れるなよー」
そう言うと努はボールを片付け始めた。
「···あ、あの」
「ん?」
「ありがとうございます!」
「うん」
体育館を出る前に、努の後ろ姿を写真に残した。
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