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家に着いて風呂に入った後、拓海からもらったお礼を開けてみた。2段の弁当箱の中には、卵焼きと唐揚げ、そしてわかめご飯がたっぷり入っていた。 ーこれ全部、拓海が作ったのか? 恐る恐る卵焼きを口に運ぶと、優しい甘みが疲れた体に染み渡った。唐揚げも味がしっかりついていて、おかずとして最高の組み合わせだった。 ものの2、3分で米もひと粒残らず平らげて、明日拓海に返せるように洗ってキッチンに置いておいた。 ーまた作ってもらいたいな そんなことを考えてるうちに眠りについた。 翌日、忘れずに弁当箱をリュックに入れて家を出た。冷たい空気が体を包む前に大学へと急いだ。 ゼミが終わり、バイト先に向かおうと大学を出ると校門前に拓海がいた。 「あれ、もしかして俺のこと待ってた?」 「···待ってました」 「···えっ?」 ーいつもなら言い返してくるのに 「一緒に行こうと思って···」 「あ、うん。···行こっか」 いつもと違って素直な拓海に調子が狂いそうで、微妙な距離を空けたまま歩いた。 「あ、弁当ありがとう」 「···食べたんですね」 「うん、めちゃくちゃ美味かった」 「そうですか···」 前を歩く拓海の顔は見えないが声は嬉しそうだ。 「いつもお礼に弁当作ったりすんの?」 「···いや、初めてです」 初めて、という言葉になぜか喜ぶ自分がいた。 「あのさー···また弁当作ってくれない?」 拓海の足が止まった。 「どうした?」 「···」 返事がないので、近づこうとすると離れた。 「来ないで」 拓海の声が震えていた。 「そう言われても···」 一歩近づくと一歩離れる。 埒が明かないと思って、距離を詰めて顔を見ると拓海は泣いていた。 「ご、ごめん···俺なんか悪いことした?」 静かに首を横に振る。 「じゃあ、何で泣いてんの?」 拓海はゆっくりと顔を上げた。 「···努のこと好きになってもいい?」 「へっ?」 驚きすぎて変な声が出た。 ー今、俺のこと好きって言った···? 思考が停止していると、拓海が涙を拭って歩き出した。質問に答えないともう会えないような気がして、拓海の手を掴んだ。 「俺さ···今まで誰とも付き合ったことなくて。好き、とかそういう感情よく分かんないんだけど···」 「男から告白されて引かないの?」 「なんで引くんだよ?」 「なんでって···」 「俺は、初めてお礼に弁当作ったって聞いて嬉しかった。それは多分、拓海が俺にとって普通じゃないっていうか···特別なんだと思う。だから前向きに検討させてください!」 頭は動いてないのに、自然と言葉がでてきた。 「それって、僕の勘違いじゃないってこと···?」 「そういうことになるのかな?」 お互い予想外の展開すぎてしばらく呆然としてた。 通り過ぎる救急車の音で我に返り、スマホを見ると時間がギリギリだった。 「拓海、急がないと!」 拓海の手を掴んだまま居酒屋へと走り出した。

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