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友達−1−
「···で、拓海くんに告白されて前向きに検討するって言ったんだ」
「うん、そんな感じ」
休みの日に、純の家に遊びに行って拓海とのことを話した。
「それから拓海くんとデートしたりしたの?」
「いや、何にも」
「それじゃただの友達じゃん」
純はため息をついていた。
「だって付き合うとかよく分かんないし···」
「まずは映画館とか行ってみれば?」
「映画かぁー。誘ってみるか」
「ちゃんとおしゃれして行けよ」
「なんで?」
さらに深いため息をついた。
「いつものジャージ姿だと特別感がないし、ただ友達と遊びに来ましたって感じになるから」
「ふーん···。ってか私服全然持ってないんだけど」
「じゃあ今から買いに行こ」
「堀内先輩は?」
「高校時代の友達と会ってるから、夜まで帰ってこないよ」
「そかそか。じゃあ頼んだ」
駅前のビルで何軒か見て回って、トップスとボトムスを2枚ずつ買った。
「あとは拓海くんを誘うだけだね」
「うん。電話してみる」
スマホを取り出して、かけようとしたとき前から歩いてくる拓海の姿が見えた。
「おーい!拓海!」
呼びかけると、こちらに気づいたはずなのに反対方向に歩き出した。
「おい!」
走って追いかけて腕を掴んだ。
「なんで逃げるんだよ」
「邪魔しちゃ悪いと思って···」
「邪魔じゃないし」
「···何してたの?」
「友達と買い物してて」
「僕は誘ってくれないんだ···」
拓海は明らかに落ち込んでいた。
「あ、いや、これはーその···」
説明に困っていると純が説明してくれた。
「初めまして、努の友達の峯岸純です。今日は拓海くんとデートに行く用の服を探してたんだよ」
改めて言われるとめちゃくちゃ恥ずかしい。
「···そうだったんだ」
「なんか、俺かっこ悪いな···」
「僕達の用事は済んだから、あとは2人で」
そう言って純は帰っていった。
「ちょ、ちょっと···置いてくなよー」
少し気まずい時間が流れて、拓海が口を開いた。
「デートしてくれるの?」
「あ、うん、映画とかどうかなーと思って···」
「僕、映画好きだから嬉しい!」
目を輝かせて喜んでいた。
「そ、そっか。いつ空いてる?」
「今日はだめ?」
「いやだめじゃないけど···」
「けど?」
「おしゃれしてないし···」
「そんなこと気にするんだ」
意外だったのか拓海は笑っている。
「今度のデートで見せてよ」
「あ、うん。わかった」
「じゃあ、行こ」
腕を引っ張られて映画館に入った。
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