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努と峯岸が一緒にビルから出てきたのを見たとき、浮かれてる自分が情けなくて消えたいと思った。 でも、努がデート用の服を買っていたと峯岸から聞いて、嬉しすぎて努を抱きしめたくなった。 半ば無理やりに一緒に映画を見ることになった。 努は落ち着かないのか、口数が少なかった。 「何見る?」 時間的にアクションかアニメの二択だった。 「俺はなんでもいいよ」 「なんでもいいって···。じゃあこっちにしよう」 アクションの方を指差すと、努は頷いた。 「俺、ポップコーン食べたい」 「うん、わかった」 一番大きいサイズを買って、最後列の席に座った。有名な俳優が出る話題作で休日ということもあり、席はほとんど埋まっていた。 「ちょっとトイレ行ってくる」 そう言って洋服の袋を持ったまま席を立った。 最新作の予告が流れ出したときに、努がトイレから戻ってきた。よく見ると服を着替えていた。 「わざわざ着替えたの?」 「···うん。だってデートだろ」 照れてる努を見て、僕も照れてしまった。 「あ、ありがとう。よく似合ってる」 「そ、そっか」 本編が始まって、ポップコーンに手を伸ばすと努の手にぶつかった。 「あ、ごめん」 「食べる?」 そう言うと、努は手を引っ込めた。中を見ると、いつの間に量が半分ほど減っていた。また手が当たらないかなと何度か試したが、努は映画に夢中になっていた。 ー体は大きいのに子どもみたいだな 映画が終わり、席を立とうとしたとき隣の人にぶつかって倒れそうになったところを努に助けられた。 「大丈夫?」 「う、うん。ありがとう」 「みんな出るまで少し待とうか」 「そうだね」 席に座り直すと、残ったポップコーンを努がすごいスピードで平らげた。 「口にポップコーンついてる」 「え、どこ?拓海、取ってくんない?」 「自分で取りなよ」 「そんなこと言わないで、ほら」 そう言って努は目を閉じて顔を近づけた。 驚かせようと、誰も見ていないことを確認してキスをした。 「え!?今···え!?」 「ほんとは何もついてないよ」 「え?何、どゆこと!?」 努は混乱して頭を抱えていた。 「そろそろ行こ」 真っ赤になった顔がバレないように席を立った。 「ちょ、ちょっと、拓海!説明してくれ!」 「嫌だ」 ー唇柔らかかったな

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