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純と別れてそろそろバイトが終わった頃だと思い、拓海に電話をしたが出なかった。そのうちかかってくるだろうと思っているうちに寝てしまい、気付いたら朝になっていた。
スマホを見ると着信もメッセージもなかった。
バイトに向かう途中で拓海の家にも寄ったが、留守のようだった。
何か嫌な予感がして、店長に聞いてみた。
「なんか、しばらく休むみたいよ」
予感が的中した。
「理由は何か言ってましたか?」
「それが聞いても答えてくれなくて。逆に仲良くしてる努に聞こうかなって思ってたんだけど、その様子じゃ知らないみたいだな」
「···はい」
「そういうことだから、ちょっとキツイと思うけどホールは頼んだ」
「分かりました」
バイト終わりにスマホを確認したが何の通知もなかった。ショックを隠せないまま、上の空で着替えているといつの間にか隣にあの女の子がいた。
「金子さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。大丈夫···」
「もしかして高橋さんのことですか?」
「え?」
「図星みたいですね。実は昨日、高橋さんと話したんです」
「何を話したの?」
「金子さんと付き合ってるかって」
ーどうしてそのことを
「そしたら、ただの友達だって言ってました。高橋さんと金子さんじゃ釣り合わないですもんね」
「釣り合わないってどういう意味?」
スマホを握る手に力が入る。
「だって、高橋さんどう見ても陰キャじゃないですかー。それに男だし」
「それって君に関係ある?」
「え?」
「俺は···男だから、とか陰キャだから、とかそんなクソつまんない物差しで拓海のこと見てるやつに色々言われくない」
「それって···」
「次、俺の大事な恋人を傷つけるようなことしたら許さない」
ロッカーの扉を勢いよく閉めて、外に出た。
粉雪が舞う中を全速力で走った。
拓海を守ってあげられなくて、悔しくて涙が出た。
家に着くと知らない番号から電話がかかってきた。
「もしもし···」
「あ、努くんかな?拓海の姉です」
「···は、初めまして。あの拓海は今どこに?」
「そのことで電話したの。今、私のとこに来てて」
「札幌ですか?じゃあ僕も···」
「帰るまでそっとしておいてもらえるかな?」
「···え?」
「会いたい気持ちはわかるし、会わせてあげたいんだけど···。何があったのかはわからないけど、ちゃんと自分が納得するまで悩んだほうがいいと思って」
「わかりました···」
「今度は拓海から連絡させるから」
そう言って電話が切れた。
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