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努から何度も電話があったが、出なかった。というより自分が許せなくて出られなかった。
次の日、朝一で飛行機に乗ってお姉ちゃんに会いに行った。札幌は一面銀世界で、寒さが身に染みた。
住所を頼りに着いたのは大きな一軒家だった。
インターホンを鳴らすとお姉ちゃんの声がした。
「はい」
「···拓海だけど」
「え!」
走る足音が聞こえて、扉が開いた。
「どうしたの!?」
驚いたお姉ちゃんの顔を見て、涙が溢れた。
お姉ちゃんは何も言わずに泣き止むまで抱きしめてくれた。
「落ち着いた?」
淹れてくれたコーヒーをテーブルに置いた。
「···うん。いきなり来てごめん」
「びっくりはしたけど、久々だから嬉しい」
1年ぶりに会ったお姉ちゃんは少し痩せていた。
「陽菜ちゃんは?」
「上で寝てる」
「そっか」
陽菜ちゃんは去年の春に産まれた。初孫ということで親も大喜びだった。
「何があったかは聞かないけど、努くんには連絡した方がいいんじゃない?」
「···」
スマホを取り出したはいいものの、手が動かない。
「お姉ちゃんがかけようか?」
何も言わずに頷いた。
「すごい心配してる声だったよ」
「···うん、来週には帰るつもり」
「じゃあ家事とか陽菜の面倒とか頼んでもいい?」
「もちろん」
「じゃあ美容室予約しよーっと」
半年以上行けてないらしく嬉しそうだった。
夜になり旦那さんの順平さんが帰ってきた。
お姉ちゃんが僕が来てるとメッセージしたようで、いたいだけいていいよ、と言ってくれた。
お姉ちゃんにはちゃんと話そうと思って、帰る前日の夜に時間を作ってもらった。
「努くんは拓海がゲイとか関係なく、ちゃんと拓海のことが好きなんでしょ?」
「···だと思う」
「そんな人なかなかいないよ」
「···うん、わかってる」
「じゃあ、あとは拓海次第だね。拓海はさ、努くんと一緒にいるときの自分が好き?」
そうお姉ちゃんに聞かれたとき、今までの楽しい思い出が蘇った。努はいつだって僕のことを最優先に考えてくれてた。
ー僕はどうだろう
努と付き合ってるか聞かれたとき、僕は僕のことしか考えてなかった。どう思われるかばっかり気にして努の気持ちを無視していた。
「答えが出たみたいね」
「···うん」
「自分から手を離しちゃだめだよ」
そう言って僕の手を強く握った。
「うん、離さない」
「今度は努くんと一緒にね」
「絶対連れてくるから」
寝る前に努に明日帰る、とメッセージを送った。
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