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最愛−1−

拓海が札幌に行ってから1週間、会ったら何を話そうかずっと考えていた。昨日、拓海から連絡があったときには、嬉しすぎて話したいことは全て飛んでしまった。 一秒でも早く会いたいと思って、到着予定時刻の2時間前には空港に着いていた。今まで撮った写真を見返しては、時計とにらめっこしていた。 到着のアナウンスが流れ、出口に向かうと拓海の姿が見えた。頭で考えるより先に体が動いて、周りの目も気にせずに拓海を抱きしめた。 「拓海、おかえり」 「努、ただいま。心配かけてごめん···」 拓海の手が背中に回る。 「帰ってきてくれたから許す」 「僕···自分の気持ち優先して、努の気持ち考えてなかった。ほんとにごめん」 「もう謝らなくていいから」 気付いたら周りに人だかりができていて、拓海の手を引いて急いで駅に向かった。 拓海は移動で疲れたのか、電車で俺の肩に頭を預けて気持ちよさそうに寝ていた。途中、起こさないよう注意しながら寝やすいように深めに座り直した。 拓海の家に着くと、渡したいものがあると言って 一緒に家の中に入った。手に持っていたのは拓海の家の合鍵だった。 「もらっていいの?」 「うん、これならいつでも会えるし」 「ありがとう。嬉しい」 「努に会えなくて寂しかった」 そう言うと俺の手を握った。 「俺の方が寂しかったよ」 拓海の手にキスをして、鍵を受け取った。 「あ、そうだ」 リュックにつけてたシロイルカのキーホルダーを鍵に付け替えた。 「お揃いだね」 「お揃いだな」 同じ鍵に同じキーホルダーが揺れている。 「毎日卵焼き食べに来てもいい?」 「毎日はちょっと勘弁して」 そう言って2人で笑った。 夕飯を食べ終え、一緒にお風呂に入った。 「あの子と話した?」 「うん、付き合ってるのかって聞かれたよ。俺、拓海のこと色々言われてキツイこと言っちゃったんだよね···」 「そうだったんだ。僕が友達とか言わなければ···」 「もう終わったことだし、今は楽しいことしよう」 後ろから抱きしめて、首筋にキスをした。白い肌がピンク色に染まっていく。 「努、好きだよ」 拓海が振り向いて唇が重なった。 「俺も好きだよ」 会えなかった時間を埋めるように、甘くて長いキスをした。

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