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大学も始まり、4年生は卒論に追われていた。
昼休みは学食で純と話した。
「純、卒論どう?」
「順調だよ。努はって聞くだけ無駄か」
「ひどいなー」
確かに全然進んでいなかった。
「拓海くんとはどう?」
「上手くいってるよ。合鍵もらったし」
シロイルカのキーホルダーがついた鍵を見せた。
「よかったじゃん」
純は自分のことのように喜んでいた。
「まさか僕も努も恋人ができるなんてね」
「思ってもみなかったなー」
純の実家にお邪魔したのが遠い昔のように感じる。
「今度さ純たちにちゃんと紹介したいんだけど」
「じゃあ今週の土曜飲みに行く?」
「お、いいね!拓海に空いてるか聞いてみる」
「実さんは出かける予定ないから多分大丈夫」
「じゃそういうことで」
「うん」
純と別れて、拓海に土曜のことをメッセージした。
すぐ既読になりOKと返事が来た。
土曜日、飲み会が始まる18時まで拓海と買い物することになった。
「努は背高いから何でも似合うよね」
気になった服を鏡の前で合わせる。
「そう?服に興味ないから全然分かんない」
目が行くのは運動しやすい服ばかりだ。
「そんなこと言わないでこれ着てみて」
そう言って試着室に連れて行かれた。
着替えてカーテンを開けると拓海が驚いていた。
「うん、似合ってる。かっこいい」
褒められるのは悪くない。
「次これ着てみて」
新しい服を渡された。そのやり取りを何回か繰り返して一番似合ってたコーディネートを買った。
「拓海は何か買わないの?」
「うーん、特に欲しいものないし」
「これとかは?」
深緑色の長めのマフラーを取って巻いてみた。
顔が半分ほど埋まっていたが可愛かった。
「いいと思うけど」
「ほんと?」
「うん」
「首チクチクしないしいいかも。買おっかな」
取ろうとした手を止めて、マフラーごと拓海を引き寄せた。
「可愛いよ」
耳元で囁くと顔が真っ赤になった。
「···マフラーで暑くなっただけだから」
拓海はなんとか誤魔化そうとしていた。
「はいはい」
居酒屋は堀内先輩の行きつけらしい。拓海には純と堀内先輩のことは大まかに話してある。
「結婚式かー。憧れるなぁ」
拓海は早速買ったマフラーを巻いていた。
「2人ともすごい幸せそうだったよ」
「家族も認めてくれるなんて羨ましい」
そう言う拓海の横顔は少し切なかった。
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