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努から峯岸と堀内先輩の話を聞いたとき、夢物語だと思っていた結婚が身近なものに感じた。 家族や友達に祝福されて、最愛の人と挙げる式は どんな感じなんだろうと考えていると、努が心配そうな顔をしていた。 「大丈夫?飲みすぎてない?」 「ちょっと考え事してただけ」 向かいの席で、同じ指輪をはめて笑い合う峯岸と堀内先輩はとても幸せそうだ。 「指輪ほしい?」 「いいなーとは思う」 「じゃあ今度一緒に見に行こっか」 「うん」 飲み会が終盤になり、努がうとうとし始めた。 「拓海くんは金子のどこが好きなの?」 堀内先輩が聞いてきた。 「優しいところ、ですかね」 「面倒くさがりだけど優しいよね」 峯岸の言葉に頷いた。 「ふーん」 本人には恥ずかしくて言えない、初めて努に会ったときのことを2人に話した。 「入学式で隣だったんだね。すごい偶然」 峯岸が驚いていた。 「それを覚えてない金子もすごいな」 残ったビールを飲み干して堀内先輩が笑った。 「うーん···今なんの話してたんですか?」 努が眠そうな顔で聞いてきた。 「金子の悪口」 「え!拓海も?」 「うん、食べ過ぎだって」 拗ねてる努を見て、3人で笑った。 居酒屋で峯岸たちと別れて、帰りの電車に乗った。 「本当は俺と初めて会ったときのこと聞いてた」 「え?」 恥ずかしくて顔が熱くなる。 「話聞いて思い出した。入学アルバムの顔と一致しなくて今まで気付かなかった」 「多分···その時から努のこと意識してた」 「そっか。なんか···嬉しい」 そう言って僕の肩に頭を乗せた。 大きな体を折り曲げて座る努の姿が窓に映る。 「体勢辛くない?」 「大丈夫」 電車を降りるころには、お酒で火照った体はすっかり冷えていた。 「いや、寒いなー」 努がポケットに手を入れて震えている。 「カイロあるけど」 「まじ?ありがとう」 そう言うと努はカイロを受け取らないで僕の手を握ってポケットに入れた。 「ずっとこうしたかったんだよね」 繋いだ手にカイロの温もりが広がる。 「···ばか」 「ばかで結構」 そう言って努は笑った。 「そういうところが···」 「ところが?」 顔を近づけて耳元で囁いた。 「好き」 努の手を引いて家へと急いだ。

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