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札幌−1−
旅行は3泊4日で、初日は拓海のお姉さん家に泊まることになった。
「いよいよ明日だなー」
「うん、楽しみ」
旅行の前日、荷造りを拓海に手伝ってもらった。
「お姉さんってどんな人?」
「いつも僕の味方でいてくれる人かな」
「気に入られるといいんだけど···」
お姉さんに会うのは、楽しみでもあったが不安でもあった。
「心配しなくても大丈夫」
そう言って俺の服を畳んでリュックに入れた。
「拓海こっち来て」
両手を広げると拓海がすっぽりと収まった。
「いっぱい写真撮ろうね」
声が楽しそうだ。
「うん、美味しんもんもいっぱい食べよ」
「いっつもそればっか」
「それが俺だもん」
「知ってる」
翌日、早朝の便で北海道に向かった。
2人とも新千歳空港に着くまで爆睡だった。
お姉さん家に行く夕方まで札幌を観光することにした。時計台の前で写真を撮ったり、市場で新鮮な海鮮丼を食べたりしてあっという間に時間が過ぎた。
お姉さんの家は札幌駅から歩いていける距離だった。家に着くと、赤ちゃんを抱えたお姉さんが迎えてくれた。
「初めまして。拓海の姉の美波です」
「拓海とお付き合いしている金子努です」
「そんなに緊張しなくていいから」
笑顔が拓海によく似ていた。
「これ、よかったら」
東京で買ったロールケーキを渡した。
「わー美味しそう!夕飯食べた後に食べよう」
拓海は旦那さんの順平さんと一緒に陽菜ちゃんの相手をしていた。
「直接会えて嬉しい」
そう言ってコーヒーを出してくれた。
「俺も嬉しいです。お邪魔しちゃってすみません」
「いいの、いいの。陽菜の子供部屋がまだ出番ないから気にしないで」
「ありがとうございます」
「あ、拓海の小さい時の写真見る?」
そう言うとリビングの本棚からアルバムを持ってきてくれた。
「お姉ちゃん勝手に見せないでよー」
「減るもんじゃないんだからいいでしょ」
アルバムを開くと、今の拓海をそのまま小さくした拓海が写っていた。
「全然変わらないでしょ」
「はい、そのまんまですね」
家族写真の中では両親と仲良く笑っていた。
「この頃に戻れるといいんだけど」
お姉さんが拓海の方を見て呟いた。
「いつか、ご両親にもちゃんと挨拶したいです」
「私もできることは何でもするから」
お姉さんの優しさが心地よかった。
「拓海からいっぱい食べるって聞いたから、たくさん食べてね。拓海、手伝って!」
「はーい」
姉弟で並んで料理をする姿を写真に撮った。
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